OMソーラー運転状況 OMソーラーの評価  
OMソーラーの評価

 OMソーラーについて太陽からのエネルギーをどれだけ取り込んだか、またそのために必要としたエネルギーはどれほどであったかを評価しました。論文として、「もったいない学会(1)」において発表(2)しましたので、それをベースに加筆し掲載します。

はじめに

 家庭部門におけるエネルギー消費は、給湯30%と暖房22%で全体の半分を占め(3)、この分野の省エネルギー化が求められます。住宅の省エネルギー化にはさまざまなものがありますが、太陽の熱エネルギーを直接取り込み、暖房と給湯に用いるパッシブソーラシステムが有望です。OMソーラー(4)として商品化されており、報告者は家を新築する際2002年に導入しました。日野気象台で気温、室温、太陽の強さなどを計測するとともに、エネルギー消費について統計データを取ることができましたので、それを元にOMソーラのエネルギー収支の評価(EPR評価)を行いました。

1.OMソーラーのしくみ
 OMソーラーは太陽の熱エネルギーを屋根で集めて、変換せず熱として直接取り込むパッシブソーラシステムで、1980年代に奥村昭雄(5)が提唱したものです。
 冬季の場合から説明します。図1.に示すように、屋根は2重構造になっており、軒先から外気をとりいれ、降り注ぐ太陽の熱で2重屋根の間を通過する間に温められます。それをモータ駆動のファンにより床下に送り、基礎コンクリートに熱を蓄えます。蓄えた熱は、夕方以降、ゆっくりと放熱して建物全体を床から温めます。稼働している間は、常に新鮮な外気を室内に取り込み、暖房しながら換気するのが特色で、いわゆる健康住宅といわれます。
 夏は、窓を大きく開け自然換気が基本です。風向を事前調査し、風を取り込むよう住宅設計をします。夏の間、図2.のように屋根の熱は室内に取り込むことなく、お湯採りに利用し、余った熱を屋外へ排出します。また、夏の晴れた日の夜間は、放射冷却によって屋根が冷えるので、温度の下がった空気を室内に取り込むことができます。
 各所に温度センサがあり、その値によって、夏・冬、昼・夜などに対応した空気の流れを制御します。そのための主要構成品はハンドリングボックスと呼ばれ、図3.に示すような構造です。夏のお湯採りは図4.のように、行われます。
 太陽熱だけで足りないときは補助暖房装置を、夏期においては必要により冷房装置を動かします。

図1 OMソーラーの冬の動作 図2 OMソーラーの夏の動作
 
図3 OMソーラシステム主要部(4)  図4 お湯採り(4)

2.評価対象のOMソーラー住宅
 報告者は、2002年12月にOMソーラー住宅を建設、入居しましました(表1)。取り込んだ太陽熱を有効に生かすため、高気密、高断熱など、住宅の基本的な性能が重要です。十分な量の断熱材を用いるのみならず、窓からにげる熱を減らすため、アルゴンガス入り複層ガラス、木製サッシを採用しました。 ただし、これらはOMソーラー独特のものではなく、近年の高性能住宅仕様と同等です。すなわちOMソーラーの住宅は、高性能住宅に上記2重屋根、ハンドリングボックスとエネルギー蓄積装置としての貯湯タンクなどを付加したものです。屋根の2重構造(鉄板)、ダクト(ボール紙)などは、通常の部材が用いられています。 制御用のセンサのほかに、気象センサを設置し、計測データをパソコンに取り込むようにしましました。温湿度のみならず、風向、風力、気圧なども計測し、その結果をホームページに5分ごとにアップし、デジタル日野気象台として公表(6)しています。

表1 評価対象住宅
 建設地  東京都日野市
 工法  在来工法
OMソーラシステ
高気密、高断熱
アルゴンガス入り複層ガラス、木製サッシ
 入居  2005.12
 延べ床  122m2
 集熱面積  33m2
 貯湯タンク  300リットル
 その他  通風と木陰、国産材
 設計・施工  鈴木工務店(東京都町田市)
3.測定結果
 たとえば、図5.は7月の1ヶ月の風向、風速の統計データで、夏は南西の風が多く吹き、夜間にはおさまることがわかります。夏の南西の風が、2階の北側の窓にスムースに流れるようにい、吹き抜け構造としています。 また、図6.は1年間の外気温と室温を示したもので、外気は最低マイナス6℃、最高37℃にもなります。しかしながら、OMソーラーの導入により、室内は冬において最低気温は15℃におさえられ、また夏もほとんど冷房なしに、過ごすことができました。
図5 風向、風速の統計データ

図6 1年間の外気温と室内温度
4.EPR評価
 自然界からエネルギーという恵を得ようとする際に、それを得るためにエネルギーが必要です。すなわち、得られるエネルギー全てが有効に使えるわけではなく、図7.のように、Eoutを得ようとすれば、Einが必要であり、その比をEPR( Energy Profit Ratio)といいます(7)。そしてEPRが大きいほど質の高いエネルギー源といいます。たとえば、石油を油田から獲得する場合、多くの油田で開発当初は100バレルの石油を得るのに、1バレルのエネルギーしか必要なかったものが(EPR=100)、その油田が古くなると、海水注入などたくさんのエネルギーを必要とし、EPR=3程度となってしまうといわれています。
図7 EPR

 次にOMソーラーについてエネルギー収支(EPR)を計算してみます。この系のEPRは、(A)取り込んだ太陽エネルギーと(B)太陽エネルギーを取り込むために使用しましたエネルギーの比すなわち
  EPR = A / B
で求められます。
 (A)の取り込んだ太陽エネルギーについては直接測定ができないので、OMソーラーを使用していない住宅の消費エネルギー(C)と当住宅の消費エネルギー(D)の差をもって、太陽から得られたエネルギーとします。すなわち
  A = C - D
で求めることとします。
 まず(D)については、この家は都市ガスと、電力が使用されているので、1年分のガ スと電気の検針データを、Jに換算して消費エネルギーとします。図8.に示すように電気消費量は通年でほとんど変化が無く、冬は、補助暖房により、ガス消費が増大しています。夏の給湯はほとんど太陽熱により供給されるので、ガス消費が激減しています。この家の1年間の消費エネルギーは、ガス21 GJ、電気48 GJ、合計69 GJでした。
 つぎに、(C)のOMソーラーのない住宅の消費エネルギーについて求めます。本来ならば当住宅において1年間OMソーラーを切って運用し、その消費エネルギーを測定すべきですが、生活上それは不可能なので、同程度の仕様の高性能住宅と比較することとします。NEDOが当住宅と同程度の規格(補助金を出す要件)を持った住宅のデータを公表していますので(8)、その中から当住宅と同様の気象条件のもの(690世帯分の平均)の消費エネルギーを用いることとします。それによると、(C)は年間106GJですので、(A)は106 −69GJとなります。(図9.)
 一方、(B)は、OMソーラーを運転するために必要となるエネルギーで、空気を取り入れるためのモータの電気消費量です。OMソーラーハウスにおいてはモータの消費電力が記録されており、5.3 GJ / 年でありました。それは平均150 Wのモータが1日10時間運転に相当します。
 このほか、OMソーラーを建設・廃棄するためのエネルギーも考慮します。OMソーラシステムにおいて付加された主要部材は、前述のとおりハンドリングボックスと貯湯タンクのみとみて、 表2.の値を用い、重量×エネルギー原単位 / 年数 × 単位換算係数により、建設の設備エネルギーを計算します。具体的には、
  (40+30)/ 1000 ×15 / 50 * 4.2
であり、これにより88MJ/年を得ます。
 以上により、EPRは
EPR = A / B
    = (C - D) / B = (106 - 69) / (5.3 + 0.088) = 6.9 
と計算されます。すなわち、消費したエネルギーの約7倍のエネルギーを獲得することができます。
図8 1年間の消費エネルギー

図9 取り込んだ太陽エネルギー


表2 主要部材
重量  ハンドリングボックス40 kg
貯湯タンク30kg
 主要素材  鉄
 設計寿命  50年
 エネルギー原単位
ボイラーの値を準用(6)
 15 Gcal / ton

5.まとめ
 太陽熱利用形のOMソーラー住宅は、ローテクながら良い性能で、EPR約7が得られました。それ以上に自然のめぐみを感じる家で、なによりも快適です。家中、温度差がなく、”温度のバリアフリー”実現されています。 また、早春の季節で、花粉症に悩まされていましたが、この家はこの時期、暖気を屋根から取り入れていますが、空気の速度は遅く、花粉は入ってこないため、花粉症から解放されました。 入居から8年たちましたがその間無故障で運転しています。
  OMソーラーの建設コストと省エネルギーされた電気ガス料金から、マネーペイバ ックタイムを計算すると12年となります。コストの点からも妥当な解といえます。
 改善したい点をしいて挙げるとすれば、現在、取り入れのためのモータは、交流の商用電源を用いていますが、直流モータとして、太陽電池で運転すればさらにEPRは向上されるでしょう(すでに商品化されている)。また補助暖房装置は、現在FF式(強制給排気式)のガスストーブを用いていますが、ヒートポンプ式空調装置をもちいれば、さらにEPR値を改善することができるでしょう。
参考文献、注釈
(1) もったいない学会:NPO法人「もったいない学会」とは、正式には「石油ピークを啓蒙し脱浪費社会をめざすもったいない学会」という。エネルギーと文明の関係を正しく理解し、石油ピーク後の社会を皆で考え拡げていくのが目的、2006年8月に発足、翌年東京都の法人となった。http://www.mottainaisociety.org/index.html
(2) 石川宏「太陽熱利用住宅のEPR評価」:http://www.mottainaisociety.org/mso_journals/vol3/ishikawa_final.pdf
(3) 資源エネルギー省「平成19年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2008)
(4)  OMソーラー: http://omsolAr.jp/omsolar/index.html
(5) 奥村昭雄 http://omsolar.jp/info/interview10.html
(6) デジタル日野気象台 :http://park18.wakwak.com/~weather/
(7) 松島潤「EPRの社会科学的アプローチ」:http://www.mottainaisociety.org/mso_journals/vol4/matsushima.pdf
(8) 平成13〜16年度にNEDOの「住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業」で高効率システムの導入に補助金を受け、なおかつNEDOに報告しましたエネルギー使用量が有効とされた690世帯の平均 http://www.omsolar.net/himawari/energy/e_nedo_2007.asp
(9) 天野治:「エネルギー原単位表」もったいない学会ホームページ